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本気で話を聞く

 ←人の目がないときに →悪しき平等主義と嫉妬心
元祖便利屋の右近勝吉氏の心に響く言葉より…


私が便利屋をはじめてから20数年の月日がたちました。

この間、世の中の移り変わりとともに、仕事の依頼内容もずいぶん変わってきました。

世の中の人は、いま、日常生活の中でどういう手助けを必要としているのか。


ここ数年の間でもっとも増えてきたのが「一緒に食事をしにきてくれ」とか「話し相手になってくれ」という依頼です。

そういう依頼主は、一人暮らしのお年寄りや、夫が仕事でほとんど家にいない主婦の場合も多いのですが、中高年の管理職の人や自営業者など、実にさまざまです。

みなさんの中には「お金を払って話し相手になってもらうなんて信じられない」と思う人も多いかもしれませんが、現実にはそういう依頼が非常に多いのです。

多い月には、依頼件数の半分近くがこの手の内容ということもあります。


中にはこんなこともありました。

「ちょっとお話したいんですが」

という女性からの電話を受けて出かけていって、1時間ほど話を聞いたら、

「これは、きょうのお代です」

と帯封のついた100万円をいただいたのです。


その女性は70歳前後で、一人暮らしをしていましたが、質素なアパートに住んでいる暮らしぶりからは、とてもお金持ちのようには見えませんでした。

彼女の話の内容から、以前は息子夫婦と同居していたけれど、嫁との関係がうまくいかずに一人暮らしをはじめたこと。

ひとりになってみると、やはり寂しくて話し相手がほしくなったことがわかりました。

けれども、100万円もの大金を払ってでも「だれかに私の話を聞いてもらいたい」と思う彼女の孤独感を想像すると、現代社会の寂しさを思わずにいられません。


私は便利屋の仕事を通して、“聞く技術”といったものの大事さを深く学ぶことができたように思います。

私は聞き役に徹します。

相手が話したいことを話したいぶんだけ話す。

それを私はただ黙って聞いているだけです。

こちらからは、ほとんど言葉を発しません。


人の話を聞くときに、調子よく相づちを打つ代わりに私がやっているのは、相手の目を見るということです。

ときどき、無言で頷きながら相手の目を見ます。

かといって、相手が話している間中、終始相手の目を見続けているわけではありません。

要所要所で頷くときに相手の目を見るぐらいがちょうどいいのです。

それが、この人は、「本気で話を聞いてくれる」と、うれしいようなのです。

『凡人が「強運」をつかむ59の心得』講談社+α文庫
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